極限は、その点の値より「近くでの振る舞い」を見る
x をある数 a に近づけたとき、f(x) がある数 L に近づくなら「x → a のとき f(x) の極限は L」といいます。ここで大切なのは、x は a の近くを動くけれど、a そのものと一致する必要がないということです。そのため f(a) が定義されていなくても、極限を考えられます。
例えば f(x) = (x² − 1)/(x − 1) は x = 1 で定義されません。しかし x ≠ 1 の範囲では因数分解して f(x) = x + 1 と書けます。x が 0.9、0.99、1.01 など 1 に近い値を取ると、出力は 2 に近づきます。したがって極限は 2 です。
= limx→1 (x + 1) = 2
これは「0/0 = 2」と計算したのではありません。もとの式に x = 1 を代入した 0/0 は値が定まらない形です。1 以外で同じ値を持つ式へ整理し、その近づき方を調べています。点に穴があっても、穴の周囲のグラフが一つの高さへ近づけば極限は存在します。
極限の計算則と、不定形のほどき方
有限な極限 lim f(x) = A、lim g(x) = B が存在するとき、和・差・積の極限は、それぞれの極限の和・差・積になります。商も B ≠ 0 なら同じように計算できます。多項式や、分母が 0 にならない有理式の極限では、通常はそのまま代入できます。
lim(f/g) = A/B (B ≠ 0)
代入して 0/0 になった場合は、結論を急がず式を変形します。多項式なら因数分解、平方根が含まれるなら有理化がよく使えます。極限を取る前に、近くで共通因子を取り除くことが目的です。
= limx→0 1/(√(1 + x) + 1) = 1/2
分子と分母に √(1 + x) + 1 を掛けると、分子が (1 + x) − 1 = x になります。x ≠ 0 の範囲で約分したあとに、極限を求めています。平方根が実数になる x ≥ −1 のうち、0 の近くを考えるので変形は問題なく使えます。
「0/0」という見た目だけでは答えは決まりません。x/x は 1 に、x²/x は 0 に近づき、x/x² は左右で異なる発散をします。不定形という名前は「極限が存在しない」という意味ではなく、追加の分析が必要という意味です。
左からと右からで、同じ場所に近づくか
x を a より小さい側から近づける極限を左極限、大きい側から近づける極限を右極限といいます。左右両方から近づける通常の極限が存在するには、左極限と右極限が同じ有限値にならなければなりません。
⇔ limx→a f(x) = L
例として f(x) = |x|/x(x ≠ 0)を考えます。x > 0 なら f(x) = 1、x < 0 なら f(x) = −1 です。したがって 0 の右極限は 1、左極限は −1。左右が一致しないので、0 における両側の極限は存在しません。
また 1/x は、x → 0+ で限りなく大きくなり、x → 0− で負の方向に限りなく大きくなります。これをそれぞれ +∞、−∞ への発散と表します。∞ は実数ではなく、値がどこまでも大きくなる様子を表す記号です。一方、1/x² は左右どちらから 0 に近づけても +∞ に発散します。
無限遠では、最も強く増える項を探す
x → ∞ は、x を限りなく大きくしたときの振る舞いです。有理式では、分子・分母の最高次数に注目すると見通しがよくなります。分母の最高次数で全体を割り、1/x や 1/x² が 0 に近づくことを使いましょう。
= limx→∞ (3 − 1/x + 4/x²)/(2 + 5/x²) = 3/2
分子の次数が分母より小さければ極限は 0、同じなら最高次の係数の比になります。分子の次数が大きい場合は発散することが多いですが、符号や x → −∞ かどうかも確認します。例えば x³/x² = x は +∞ では +∞、−∞ では −∞ へ向かいます。
平方根の差では、大きな量同士を単純に「∞ − ∞」として計算できません。例えば √(x² + x) − x は、有理化すると正しい振る舞いが見えます。x > 0 の範囲で √(x² + x) = x√(1 + 1/x) を使います。
= x/(√(x² + x) + x)
= 1/(√(1 + 1/x) + 1) → 1/2
グラフが無限遠で y = L に近づくとき、この直線を水平漸近線と呼びます。漸近線と交わってはいけないわけではありません。大きな x で差が 0 に近づくという性質が本質です。
はさみうちと、三角関数の基本極限
直接の計算が難しい関数でも、上下を簡単な関数ではさめれば極限を求められます。a の近くで g(x) ≤ f(x) ≤ h(x) が成り立ち、g と h が同じ L に近づくなら、間にはさまれた f も L に近づきます。これをはさみうちの原理といいます。
したがって limx→0 x² sin(1/x) = 0
sin(1/x) 自体は 0 の近くで何度も振動し、一つの値に近づきません。しかし振幅を表す x² が 0 に近づくため、積全体の揺れは 0 へ押し込められます。振動する部分を無理に計算するより、絶対値を上から抑える発想が有効です。
微分につながる大切な極限が、次の二つです。角度は必ずラジアンで測ります。単位円の弧と三角形の面積を比べると、0 < x < π/2 で sin x < x < tan x が得られ、はさみうちから最初の極限を示せます。
limx→0 (1 − cos x)/x = 0
二つ目は 1 − cos x = 2sin²(x/2) などを使って導けます。例えば limx→0 sin(3x)/x は、sin(3x)/(3x) × 3 と分けることで 3 です。角度の中身と分母の変数をそろえるのが計算のこつです。
「どこまで近づければよいか」で極限を捉える
極限の意味をもう少し正確に考えてみましょう。f(x) が L に近づくとは、「出力を L からどんなに小さな誤差の範囲に収めたくても、入力を a に十分近づければ、それを実現できる」ということです。誤差の目標を先に決め、入力側の範囲を後から選ぶ順番が重要です。
入力の条件:0 < |x − a| < δ
ε(イプシロン)は好きな正の誤差、δ(デルタ)はその目標に応じて選ぶ正の距離です。「十分近い」という言葉を、具体的な不等式で表しています。入力の条件で 0 < |x − a| とするのは、a そのものの値を極限の判定から除くためです。
例として f(x) = 3x + 1、a = 2、L = 7 を考えます。出力の誤差は |(3x + 1) − 7| = 3|x − 2|。誤差を ε より小さくするには、入力の距離を ε/3 より小さくすれば十分です。そこで δ = ε/3 と選べば、どんな ε > 0 に対しても目標を達成できます。
この見方は「近い数を何個か試す」との違いを明確にします。特定の点だけで値が近くても、間のすべての点で近いとは限りません。極限では、一度決めた近傍の中のどの入力に対しても、出力の誤差が目標以内になることを求めています。
連続とは、極限とその点の値が一致すること
関数 f が x = a で連続であるとは、①f(a) が定義され、②x → a の極限が存在し、③その極限が f(a) と等しい、ということです。「グラフを鉛筆を離さず描ける」というイメージは便利ですが、正確にはこの三条件で判断します。
f(x) = (x² − 1)/(x − 1)(x ≠ 1)に f(1) = 2 という値を追加すると、x = 1 の穴を埋めて連続な関数になります。f(1) = 5 と決めた場合は、極限 2 と関数値 5 が異なるため連続ではありません。点の値を一つ変えるだけでも、その点での連続性は変わります。
連続関数の大きな利点は、間の値を飛び越えないことです。閉区間 [a, b] で連続な関数が f(a) < 0、f(b) > 0 を満たすなら、a と b の間に少なくとも一つ f(c) = 0 となる点があります。これを中間値の定理といいます。解が一つだけとは限らない点に注意しましょう。
また閉じた有限区間上の連続関数は最大値と最小値を持ちます。「連続」「閉区間」という条件は重要です。1/x を 0 < x ≤ 1 で考えると上へ限りなく大きくなり、最大値を持ちません。極限と連続を押さえると、微分や積分で条件を確かめる意味が見えてきます。
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理解を確かめる
まずは紙とペンで考えてから、解答をひらいてみましょう。
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x ≠ 2 で (x² − 4)/(x − 2) = x + 2。近くで等しい式の極限を使い、2 + 2 = 4 です。
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分子・分母を x² で割ると (5/x + 1/x²)/(1 + 3/x²)。分子は 0、分母は 1 に近づきます。
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sin(4x)/(2x) = 2 × sin(4x)/(4x)。4x → 0 なので基本極限から 2 × 1 になります。
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x ≠ 3 では f(x) = x + 3 なので x → 3 の極限は 6。その値と f(3) を一致させます。